第111回 薬剤師国家試験の全体総評
2026.3.2公開
薬剤師国家試験は毎年出題形式や難易度のバランスが変化し、その年ごとの特徴を正しく把握することが合否を左右します。第111回薬剤師国家試験を受験して、「今年は難しかったのか」「理論と実践ではどちらが厳しかったのか」「合格ラインはどのあたりになりそうか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では、薬剤師国家試験予備校メディセレ代表・児島 惠美子氏による分析をもとに、第111回薬剤師国家試験の全体的な難易度、前回試験との比較、出題区分別の傾向、そして合格ラインの目安について詳しく解説します。自己採点後の判断材料として、また今後の学習や進路を考えるうえでの参考として、ぜひご活用ください。
第111回 薬剤師国家試験の全体総評
試験全体の難易度
第111回薬剤師国家試験は、必須問題については例年と同程度の難易度であり、全体として大きな難化は見られませんでした。一方で、理論問題は比較的取り組みやすい内容であった反面、実践問題についてはやや難しく感じた受験生も少なくなかったものと思われます。
このような出題傾向を踏まえると、理論問題で着実に得点を重ねることができたかどうか、また実践問題において基礎知識を応用し、適切に対応できたかどうかが、結果として合否を左右する要因となった試験であったと考えられます。
第110回薬剤師国家試験との比較
第111回薬剤師国家試験では、第110回と比較して図やグラフを用いた問題が28題と多く出題されました。また、計算問題も17題にのぼり、設問の内容を正確に読み取り、情報を整理したうえで解答する力が、これまで以上に求められた試験であったと考えられます。
この傾向から、単なる知識の暗記にとどまらず、図表から必要な情報を的確に読み取る力や、計算過程を丁寧に積み重ねる力の重要性があらためて示されたといえます。今後の学習においても、図表問題や計算問題に継続的に取り組み、「正確に読む力」と「確実に解き切る力」を養うことが重要です。
出題区分別の難易度
必須問題
必須問題の難易度は平年並みであり、第109回薬剤師国家試験のように足切りにより不合格となる受験生は、今回は多くは見られなかったと考えられます。基礎的な内容を確実に押さえていれば、十分に対応可能な構成であったといえます。
必須問題は、大きく差がつく分野というよりも、「確実に得点すべき問題」を取りこぼさないことが重要です。基本事項を確実に理解し、安定して得点できる力を身につけておきましょう。
理論問題
理論問題は、例年と比べると全体として取り組みやすい内容であったと考えられます。物理・化学・生物が難しく感じられる傾向は例年通りでしたが、今回は特に薬剤分野について難しく感じた受験生も少なくなかったものと思われます。
理論問題では、得点できる問題を確実に積み重ねることが重要です。苦手分野があったとしても、基礎を徹底し、標準的な問題で安定して得点できる力を養うことが合否を左右します。分野ごとの難易度に左右されすぎることなく、全体を見据えたバランスのよい学習を心がけましょう。
実践問題
実践問題は、例年と比べてやや難しく感じた受験生が多かったと考えられます。特に衛生分野では計算問題が6問出題されるなど、想定以上の計算量となり、戸惑いを感じた受験生も少なくなかったものと思われます。
実践問題では、知識そのものに加え、設問の意図を正確に読み取り、必要な情報を整理して解答に結び付ける力が求められます。日頃から時間配分を意識し、計算過程を丁寧に確認する練習を重ねておきましょう。
合格ライン分析(メディセレ社調べ)
平均点から見る合格ライン
速報時点での平均点は235点でした。なお、第105回薬剤師国家試験では、速報時点の平均点が234点で、その際の合格ラインは213点でした。
(ちなみに、速報の平均点は自己採点を行う自信のある受験者が中心となるため、例年、最終的な平均点は速報値から約6点程度下がる傾向があります。そのため、最終的な平均点は230点前後になると見込まれます。)
正答率60%以上の問題数から見る合格ライン
今回のメディセレの自己採点システムの結果を見ると、正答率60%以上の問題は232問ありました。これは第106回薬剤師国家試験と同じ数であり、当時の合格ラインが215点であったことから、今回の合格ラインは215点前後の合格ラインになる可能性が高いと考えられます。
以上2つの観点から、今回の合格ラインは215点前後になると予想されます。
禁忌肢と必須問題における足切りライン
自己採点が終わると、禁忌肢の選択状況が気になるところです。現時点では、禁忌肢を選択している受験生は見られるものの、2つ以上選択しているケースは確認されていないため、大きな問題になる可能性は低いと考えられます。
10年間の正答率比較(必須)

10年間の正答率比較(理論)

10年間の正答率比較(実践)

領域別の出題傾向と内容
最新トピック・時事問題の出題状況
医療ドラマ「アンサング・シンデレラ」で取り上げられた症例に関連する内容が出題されました。また、刑事ドラマや漫画などでも扱われるスイレンの毒に関する問題も出題されるなど、時事性や社会的関心を意識した設問が見られました。
近年の国家試験では、学術的な知識だけでなく、医療現場や社会で話題となった事例を背景とする問題も出題される傾向があります。日頃の学習に加え、医療ニュースや話題となった事例にも目を向け、知識を実社会と結び付けて理解する姿勢を大切にしていきましょう。
『物理』出題傾向 ~計算問題の継続出題~
物理分野では、3年連続で必須問題に計算問題が出題されており、今年も計算力の重要性が改めて示された内容でした。
出題される計算問題の多くは基本的な公式や原理の理解を土台としています。公式を暗記するだけでなく、その意味を理解し、途中式を丁寧に追う練習を重ねることで、確実に得点できる力を身につけていきましょう。
『化学』出題傾向 ~視覚情報を用いた出題~
化学分野では、生薬末を光学顕微鏡で観察した写真と問題文からシャクヤク末を選択する問題が出題されました。細かな観察所見をもとに判断する必要があり、難易度の高い設問であったといえるでしょう。
知識を断片的に覚えるのではなく、写真や図と結び付けながら理解を深める学習を心がけましょう。視覚情報と知識を関連付けて整理することが、応用力の向上につながります。
『生物』出題傾向 ~安定得点の重要分野~
今年度は化学分野の難易度が高かったこともあり、物理・化学・生物の合算による足切りを回避するためには、生物分野で確実に得点しておく必要があったと言えます。
苦手分野の対策に取り組むと同時に、得意分野で安定して得点できる状態をつくっておくことが大切です。
『衛生』出題傾向 ~実践で計算問題多出~
衛生分野では、実践問題において計算問題が多く出題され、想定以上の計算量に不安を感じた受験生も少なくなかったと考えられます。
式の意味を理解し、途中計算を丁寧に確認する習慣を身につけましょう。
『薬理』出題傾向 ~初出題薬物の出題~
薬理分野では、これまで国家試験で出題されたことのない初出題の薬物が散見され、受験生にとって対応が難しい内容も含まれていました。
もっとも、初出題の薬物であっても、作用機序や薬理分類などの基本事項を理解していれば、選択肢を絞り込むことは可能です。個々の薬物名を暗記するだけでなく、共通する作用や特徴を体系的に整理する学習を心がけましょう。
『薬剤』出題傾向 ~長文設問の出題~
薬剤分野では、問題文が3ページにも及ぶ設問が出題され、情報量の多さに戸惑った受験生も多かったと考えられます。
近年はこのように、長文から必要な情報を読み取り、整理して解答する力が求められる傾向が見られます。文章量に圧倒されず、設問で問われているポイントを的確に把握し、不要な情報を切り分ける力が重要です。日頃の演習から長文問題に慣れ、要点を素早く整理する練習を重ねておきましょう。
『病態・薬物治療』出題傾向 ~複数疾患症例の増加~
病態・薬物治療分野では、単一疾患ではなく、複数の疾患を併発した症例を扱う問題が増加し、より臨床的な判断力が求められる内容となっていました。
複数疾患が絡む症例問題では、それぞれの病態を個別に理解するだけでなく、相互作用まで考える力が必要となります。疾患ごとの知識を整理するだけでなく、「実際の臨床ではどう判断するか」という視点を意識して学習を進めましょう。
『法規・制度・倫理』出題傾向 ~周辺知識を問う出題~
法規・制度・倫理分野では、「ラポール」といった心理学用語も出題されるなど、周辺領域にまで理解が及んでいるかが問われる内容となっていました。
法規や制度を単なる知識として覚えるのではなく、実際の医療現場でどのように活かされるのかという視点を持って学習を進めていきましょう。
『実務』出題傾向 ~現場想定型出題~
実務分野では、低用量ピルの服薬指導について、写真を用いた具体的な場面設定の問題が出題されるなど、実際の現場を意識した内容が見られました。
実務分野では、知識の有無だけでなく、状況に応じた判断や適切な説明内容を選択する力が求められます。教科書的な理解にとどまらず、「自分ならどのように説明するか」という視点を持って学習を進めていきましょう。
これから薬剤師国家試験を受験する皆様へ
まずは、過去問を正しく活用することが大切です。過去7年分の問題を、最低でも3周は解くことをおすすめします。
1周目は、試験の全体像を把握するとともに、自分が解けない問題や苦手分野を見つけることを目的に取り組みましょう。
2周目では、単に答えを覚えるのではなく、「なぜこの選択肢が正しいのか」「なぜ他の選択肢は誤りなのか」を理解できるように学習することが重要です。
そして3周目では、正答率60%以上の問題を確実に得点できる状態を目指してください。ここを取りこぼさないことが、合格に直結します。
さらに、“未来問”とも言われる模擬試験も正しく活用することが大切です。1社だけではなく、2社以上の予備校の模擬試験を受験することで、さまざまな出題パターンに触れ、応用力を養うことができます。
模擬試験の結果を見る際には、正答率が高いにもかかわらず自分が間違えた問題に注目してください。それこそが自分の弱点です。そうした問題を重点的に復習し、弱点を一つずつ克服していくことが合格への近道になります。
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